Basic information

基本情報

BASIC INFORMATION

中国会計制度・実務のポイント

1.中国会計制度の概要

中国の会計制度は、「会計法」により会計処理の原則や会計期間、会計帳簿等の基本的取り扱いが規定されています。中国会計法の主なポイントは以下の通りです。

項目 内容
会計年度 会計年度は新暦1月1日より12月31日
記帳本位通貨 原則として人民元が記帳本位通貨
例外として業務収支について外国通貨が主である場合、1種類の外国通貨を記帳本位通貨として選択することができる。ただし、財務報告書人民元に換算建で作成。
使用言語 原則として中国語。
例外として外商投資企業は1 種類の外国語を併用することができる。
発生主義会計 実際に発生した経済事象に基づき、会計制度の規定に従い確認、計算及び記録をしなければならない。
会計資料の作成 会計証票、会計帳簿(総勘定元帳、明細帳簿、仕訳日記帳及びその他補助帳簿)、財務会計報告書及びその他の会計資料は、国家統一の改正制度の義弟に合致しなければならない。
会計資料の保管 会計法にて会計資料の保管義務が規定されており、会計書類管理弁法において、会計証憑及び会計帳簿の保管期間は30年、財務会計報告書は永久保存とされている。
会計部門及び会計人員の設置 会計業務の必要に基づき、会計部門を設置しまたは会計人員を設置し、かつ会計主管人員(一定以上の会計師資格を有する者)を指定しなければならない。設置条件を満たしていない場合、ライセンスを有する会計代理記帳業者に記帳業務を委託しなければならない。
法律責任 会計帳簿を設置していない場合
会社に3千元以上5万元以下の過料。主管人員または責任者に2元以上2万元以下の過料を科すことができる。
会計資料の偽造、隠蔽等がある場合:
会計資料等を偽造した場合、犯罪を構成する場合には刑事責任を追及し、犯罪を構成しない場合には法人に対して5千元以上10万元以下の過料に、主管人員または責任者に3千元以上5万元以下の過料を課すことができる。
会計資料の偽造等の示唆をした場合:
会社、会計人員及びその他の担当者に、会計資料の偽造、変造、虚偽の資料の作成、会計資料の隠蔽または故意による破棄などを示唆、指図及び強要した場合、犯罪を構成する場合には刑事責任を追及し、犯罪を構成しない場合5千元以上5万元以下の過料を課すことができる。

2.会計基準

会計全般に関する包括的なルールである会計法の下に、会計処理原則を定めた会計基準として2006年に公布された新会計準則と、それ以前に適用されていた旧会計準則(企業会計制度)の2つがあります。

新会計準則は、2007年より上場企業、国有企業や一定規模以上の企業などから適用が開始され、順次適用範囲が拡大されています。一方、旧会計準則(企業会計制度)は比較的規模の小さい会社が適用している傾向があります。新会計準則はIFRSへのコンバージョンを順次進めており、旧会計準則(企業会計制度)には規定されていない項目の基準の導入が進んでいることから、日本親会社との連結決算を意識した場合、会計処理及び情報の統一性を鑑みれば新会計準則を適用された方がよいといえます。

新会計準則と旧会計準則(企業会計制度)の主な差異
新会計準則 旧会計準則(企業会計制度)
連結財務諸表 連結子会社がある場合作成必要 作成は任意
投資勘定の評価(個別決算書) 子会社投資は原価法
関連会社投資は持分法
持分法により評価
棚卸資産の評価 後入先出法はなし
運送仕入諸掛費用は取得原価算入
後入先出法選択可
運送仕入諸掛費用は期間費用計上
有形固定資産 資産除去債務の認識必要 資産除去債務処理基準なし
無形固定資産 一定の要件を満たす開発費は資産計上 開発費は期間費用計上
のれん 毎期減損テストし、減損がある場合減損処理 契約で投資期間の定めがある場合には投資期間、ない場合には10年以下で償却
減損の戻入れ 戻入れ禁止 回収可能額が回復し減損の原因が解消された場合には戻入れ
税効果会計 強制適用 適用は任意
デリバティブ 公正価値により資産または負債計上ヘッジ会計基準適用 基準なし(簿外)
退職給付債務 確定給付会計に関する会計基準適用 基準なし(簿外)
有給休暇 有給休暇に関する会計基準適用 基準なし(簿外)

3.中国会計実務の留意点

(1)発生主義会計と発票主義会計

中国の会計制度上および企業所得税法上も発生主義が基本原則とされています。
しかしながら、非上場会社である外商投資企業の主な利害関係者は、出資者、従業員及び税務当局ですが、
中国の会計実務上は、税務当局の意向に沿った処理を優先する傾向にあります。
特に、増値税の発票(インボイス)発行や取得に合わせた処理、いわゆる「発票主義」が実務上優先されている実態があります。

発生主義会計 発票主義会計(実務処理)
収益の計上 商品販売の場合、以下のすべての要件を満たす場合に収益を認識する。
①商品の所有権にかかる主要なリスクと経済的便益の移転があること
②所有権移管する通常の管理権を継続して有さず、有効な支配もないこと
③収入金額は信頼性をもって測定できること
④関連する経済的便益の流入する可能性が高いこと
⑤関連原価は信頼性をもって測定できること
増値税の発票を発行したときに、会計上の収益を計上する。
(注)増値税納税義務発生日は、売上代金受領日又は売上代金取立証憑受領日とされており、発票を事前に発行する場合には、発票発行日とされている。
なお、掛売・分割受領の物品販売の場合には、契約書に基づく代金受領日(契約書がない場合又は契約書に代金受領日を約定していない場合、物品出荷日)とされており、前受販売の場合には、物品出荷日とされている。
費用の計上 以下のすべての要件を満たす場合に費用認識ができる。
①経済的便益が流出し
②企業資産の減少あるいは負債の増加をもたらす可能性が高く、
③経済的便益の流出額について信頼性をもって測定できること
増値税の発票取得時に、取得した発票に基づき会計上も費用計上する。
なお、企業所得税法上、損金算入要件に適正な証憑の取得が求められており、増値税課税取引については増値税発票の取得が、増値税非課税取引については発票以外の外部証憑の取得又は内部証憑の備え付けが必要とされている。

中国の会計実務では、適切な会計処理に基づく会計報告より、増値税申告や企業所得税申告を重視する意識が強いことが影響しています。
このため、会社として会計の目的を明確にし(本来の会計報告を優先)、会計上の処理を優先しつつ税務上との差異をなるべく小さくする対応(増値税発票の先発行や増値税申告書内での調整(発票未発行売上申告)、支出にかかる発票の取得等)を社内で徹底するなどの工夫が必要となります。

(2)年度決算及び会計監査

中国の会社法第164 条では「会社は、各会計年度終了時に財務会計報告書を作成し、法律に従い会計士事務所の監査を受けなければならない。」と規定されてます。
また、外資企業に関する特別法である三資企業法(合弁企業法、合作企業法及び独資企業法)では、外商投資企業の作成する決算書について中国注冊会計師による会計監査を義務付けていましたが、2020年より施行された外商投資法により、三資企業法が廃止されたことに伴い、一人有限責任会社(出資者が一人又は一社の会社)を除き(注)、一般の外商投資企業は中国注冊会計師による会計監査は任意になったものと考えられます。
ただし、実務上は企業所得税の申告が欠損申告となる場合(過年度繰越欠損金を当年度の課税所得に充当する申告を含む)や利益配当を行う場合に、税務局や外貨管理局から監査報告書の提出が求められる場合があり、その後の各種行政手続き上の必要性を鑑みれば、注冊会計師事務所による会計監査は実質的に従来通り必要といえます。

会社法第62条にて一人有限責任会社は会計事務所の会計監査が義務付けられている。

(3)日本親会社との連結決算

日本親会社との連結決算を行うにあたり、以下の点に留意する必要があります。

  1. 会計期間と作業スケジュール日本の連結会計のルールでは、連結グループに属する親会社と子会社の決算期は原則として統一することとされていますが、特例で3か月以内の差異は認められています(重要な差異がある取引は調整必要)。
    中国の会計期間は、会計法にて1月1日から12月31日までと決められておりますので、日本親会社の会計期間に合わせて変更することはできません。
    日本親会社が3月決算である場合には、特例の3か月以内の差異の範囲であることから、会計期間を統一する必要はありませんが、中国の会社は12月決算であるため、翌年1月から4月にかけて会計監査が集中していること、例年1月末から2月月初頃に旧正月休みが入ることから、連結決算作業は実務上かなりタイトなスケジュールでの対応が必要となります。
    なお、日本親会社が12月決算である場合には、日本親会社の連結決算スケジュールに合わせ、中国現地法人側で単体決算の早期化、ローカル会計監査の早期対応(期中監査実施等)など、中国現地法人側で事前に段取り良く対応をしていくことが求められます。
  2. 現地決算書の連結修正中国現地法人の決算書から日本親会社基準への決算書修正作業にあたり、実務上留意すべき点として以下の事項が考えられます。
    1. 中国現地法人決算書からの修正中国会計基準で作成された決算書について、中国基準による会計処理が行われていない場合には、中国基準により準拠した決算書に修正する必要があります。
      なお、中国注冊会計士事務所による会計監査が行われている場合でも、中国基準に準拠していないと思われる決算書を見るける場合が少なくありません。中国での会計監査がどの程度の水準で行われているか、会計監査を行った注冊会計士事務所のレベルをある程度把握しておいた方が良いでしょう。
    2. 連結決算対応人材の確保中国会計基準と日本親会社が採用する基準との差異及びその影響度の分析や、日本親会社財務担当者や日本親会社の会計監査人にとのコミュニケーションが必要であることから、連結決算に関する基礎知識と、日本側とコミュニケーションがとれる人材の確保が求められます。
      しかしながら、中国では中国税実務に長けた財務人材はいるものの、会計基準や連結決算を熟知した人材は比較的少ないため、自社内での対応が困難な場合には、外部の財務コンサルタントの支援を検討された方がよいでしょう。
(4)中国現地法人の財務資料

新会計準則で作成が求められている財務資料は、資産負債表(貸借対照表)、利潤表(損益計算書)、現金流量表(キャッシュ・フロー計算書)、所有者権益変動表(資本等変動計算書)及び附注(注記)とされています。
なお、資産負債表は一級科目までの記載であり利潤表は管理費用・販売費用・財務費用の内訳表示はされないため、各科目の内訳を把握するには、二級科目以下を表示した科目余額表(残高試算表)を入手する必要があります。また、月次推移表や前期比較表など財務分析のための資料は、中国現地法人が使用する会計ソフトで自動作成できない場合または使い勝手が悪いことが多く、別途作成が必要となります。

中国現地拠点の記帳代行、月次巡回監査、年度会計監査支援及び連結決算書作成支援業務に関心のある方は遠慮なくご相談ください。

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